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晴れランタン

「恋愛+何か」なBL小説を書いている灯束きはれ(ともづかきはれ)のブログになります。

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【瑠璃は月夜に攫われて前日譚SS】『その月は、手を伸ばさず』


「そんなふうに私を照らしたところで、一体何になる?」

7月7日よりAmazonで『瑠璃は月夜に攫われて』の配信が開始されます。
それに合わせて前日譚SSを書きましたので、本文の「つづき」よりどうぞ。
蓮生(イラスト右の子です)の話になっています。
作品の詳しいあらすじなどについては、こちらにて。
電子書籍店より順次配信中の『瑠璃は月夜に攫われて』どうぞよろしくお願いします。

作品配信先(順不同、配信が確認できたところから随時追加)
 楽天kobo電子書籍ストアRenta!Amazondブック
  ebookjapanhonto電子書店パピレスどこでも読書
 DMM電子書籍GirlsManiaxibookstore


『その月は、手を伸ばさず』

 

  その夜、蓮生が目を覚ましたのは、まったくの偶然であった。
(月が出ていたのか……)
 どうりでまぶしいと感じたはずだと、蓮生は座りの悪さを感じながらも格子窓へと目を向けた。
 その隙間から輝く光を感じ取ることはできるものの、肝心の光を放つ月の姿を、蓮生の目が映すことはない。
 この光を感じることがなければ、こうやって目を覚まさずにすんだものを。
 深い眠りから意識を浮かび上がらせるはめになり、つい、そんな気持ちを抱いてしまう蓮生を、月の光は照らし続ける。
「そんなふうに私を照らしたところで、一体何になる?」
 思わず、姿の見えない月へと問い掛ける。
(私などではなく、もっと別のものを照らせばいいだろう……)
 己を照らしたところで、蓮生には陽(ひ)のように輝きを分け与えることもなければ、光を受けて輝くこともない。
 蓮生にできることは、望まれるがまま、この場所に在り続けることだけだ。
 受け入れることも、拒むこともできず、ひっそりとそこに在る。
 ――たとえ、それが蓮生の望みでないとしても。
(そう、私にできることは、何もない)
 随分と前からそんなことはわかっていたはずだというのに、改めて思い知らされた気がした。
 哀しみはおろか、喜びさえもない。ただ無が広がっているだけだ。
 そんな思いとは裏腹に、月は未だに蓮生を照らしている。
「もしも月に手があるのだとすれば、お前は私を……」
 その言葉が最後までつむがれることはなかった。
 それを口にしたところで、一体何になるというのか。
「何を言っているのだろうな、私は」
 自嘲を含んだ言葉は誰に聞かれることもなく、静かに消えていき、その場には静寂が戻った。


『瑠璃は月夜に攫われて』を読んだ後に読んでいただくと「あぁ、だから……」と思われる点があるかもしれません。7月7日よりAmazonでの配信も開始されます。
作品のあらすじなどについてはこちらで書いていますので、よければ合わせてご覧ください。
電子書籍店より順次配信中の『瑠璃は月夜に攫われて』どうぞよろしくお願いします。

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